中国彝族の死生観と民族アイデンティティの形成
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概要
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本論文は,独特の霊魂観と祖霊崇拝を母体として生まれた中国彝族の葬送儀礼について,その人間形成機能に着目しつつ考察するものである。葬送儀礼は,死後に行われる儀礼であり,人生儀礼の中で最後の通過儀礼である。葬送儀礼はすべての人にとって避けられない儀礼であり,死者を対象とし肉体を離れた霊魂を取り扱う儀礼という特徴を持っている。従って彝族の葬送儀社に関する先行研究の中でも,多くの場合,葬送儀礼は死者のための儀礼として宗教学的,民俗学的,文化人類学的等々の関心のもとで扱われてきた。しかし,これらは葬送儀礼の経過の具体描写にとどまり,生者を対象とした人間形成という教育学的な観点からの葬送儀礼の研究は殆どされてはいない。従って本研究では,中国彝族の葬送儀礼が持つ人間形成機能を,その中でも特に重要と思われる死生観と民族アイデンティティの形成に焦点を当て,解明することを目的とする。
- 日本文化人類学会の論文
- 2000-09-30