生徒の教育記録に対する権利の保障と制約について
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概要
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開示請求権の趣旨をプライヴァシーの権利の保障と捉えた場合、それは憲法上の権利であるから不開示事由該当性の厳格な判断が求められる。開示請求権の趣旨を教育を受ける権利の実現と捉えた場合、それは条例創設権であると解され、不開示事由該当性の判断が緩やかになることはやむを得ない。指導要録・調査書の開示請求権を制約するに当たっては、プライヴァシーや教育評価の性質を検討する必要があるが、開示に消極的な教育委員会・学校・教員の論拠にはそのような観点が捨象され、開示による教員の不利益に固執したという問題点が見られる。訂正請求権の趣旨をプライヴァシーの権利の保障と捉えた場合、不正確・不適切な記載内容が訂正されなかったことによって児童生徒が不当な不利益を被ったならば、端的に憲法上のプライヴァシーの権利の侵害と見なすべきである。訂正請求権の趣旨を教育を受ける権利の実現と捉えた場合、不正確・不適切な記載内容が訂正されなかったことによって児童生徒が不当な不利益を被ったならば、指導要録であれば端的に憲法上の教育を受ける権利の侵害、調査書であれば端的に適性手続きの侵害と見なすべきである。指導要録・調査書の訂正請求権を制約するに当たっては、不正確・不適切な記載内容によって児童生徒が被る不利益を十分に考慮すべきであり、訂正請求規定の解釈と審査の枠組みを再構成するとともに、条例の改正や別個の法制度が検討されてもよい。
- 2009-06-30