中国の台頭が東アジア安全保障に与える影響 : 分析的折衷主義の視点から
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概要
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近年、目覚しい経済発展に伴い、中国は軍事力を増強しており、日本を含めた近隣諸国は、中国の台頭が東アジアの安定化要因となるのか否か注目している。コープランドやグリエコ等、多くのリアリストは、中国の経済成長が継続すれば、いずれ自国の政治的・経済的地位を向上させるために、地域の安全保障秩序を変えようとするであろうと警告している。実際、近年、中国はしばしば尖閣諸島の領有権をめぐって挑発的態度を示し、日本と厳しく対立している。このように、中国は世界経済の牽引役であるだけでなく、当該地域の安全保障上の脅威とも見なされている。 こうした東アジア地域情勢を踏まえると、中国の台頭が東アジア地域に軍事的不安定化をもたらすか否か考察することには、大きな意義があるといえる。本稿では、リアリズム、ネオリベラル制度論、そしてコンストラクティビズムの3つの視点を融合した分析的折衷主義の視点を応用し、この主題を考察する。第IV章では、分析的折衷主義の視点から、現代東アジア安全保障を分析する。第V章では、(1)アメリカは緩やかな対中抑止政策を展開する一方で、中国をASEAN地域フォーラム(ASEAN Regional Forum: ARF)のような多国間制度への取り込みを図る可能性が高いこと、(2)中国は経済発展を最優先課題に掲げているだけではなく、中国のアイデンティティが変化していること等により、短期的予想として、中国が東アジア地域において大規模な軍事行動を採る可能性は低いことを論証する。
- 2010-12-25