看護学生の死生観構築を目指した「デス・エデュケーション(生と死の教育)」の試み
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究の目的は、看護学生(以下、学生とする)の死生観構築を目指した授業である「「デス・エデュケーション(生と死の教育)」プログラムの試案を作成し実施することで、授業前後における学生の死生観の変化についてどのような変化がおきているのかを明らかにするものである。今回は、その中の一部である人間の誕生をテーマとする胎児の命に関する学習として、「人工妊娠中絶」、「出生前診断」、「減数手術」、「無脳児の臓器提供」を授業に取り上げ、学生の生と死に対する考え及び臓器移植に対する考え方の変化を調査した。評価方法は、学生が授業の前後に質問数10項目に回答すること、授業後に自己の学びをレポートとして記述するという形式を用いた。その結果、1)「死」という言葉のイメージにおいて「悲しみ」、「苦しい」を選択した学生が、授業後は増加した。これは、胎児の命が中絶行為にて奪われることに対して、学生が命の痛みを感じたからである。2)生命の誕生は尊いと「非常に思う」と回答した学生が、授業後は増加した。これは、胎児の命を一人の人間として尊重した結果といえる。3)自分が病気になった場合、「誰の臓器でも移植を希望する」と回答した学生が、授業後は減少した。これは、「無脳児の臓器提供」における学習内容が、臓器移植や臓器提供に伴う判断の難しさに繋がった結果といえることなどが明らかになった。以上のことから、人間の誕生をテーマとする胎児の命に関する学習は、学生の死生観を構築する一助となることが示唆された。
- 2008-12-23