ディドロ演劇論研究 : 役者の演技の在り方について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
役者の演技の在り方については、対立する二つの見解が存在している。より正確に言えば、一つの意見と一つの理論が存在しているのである。その一つの意見によれば、役者は、演じている芝居の登場人物の役のなかに自己を没入させるべきであり、心で演じるべきである。その一つの理論によれば、役者は、演じている芝居の登場人物の役を、意識的・自覚的に演技するべきであり、多大な判断力をもってして、演じるべきである。 『俳優についての逆説』と題された著作において、ディドロは、この理論を見事に確立した。彼は、凡庸な、つまらない大根役者を作るのが、極度の感受性であり、無数の幾らでもいる下手な大根役者を作るのが、ほどほどの感受性であり、卓越した役者を準備するのが、感受性の絶対的欠如である、と述べているのである。 この理論は、ディドロのミーメーシス美学に基づいている。感受性の絶対的欠如の理論は、彼の理想的モデルの美学に根拠をもっているのである。 ディドロは、スタニスラフスキーの先駆者である。但し、そのスタニスラフスキーは、真のスタニスラフスキーであって、ソ連の社会主義リアリズムのスタニスラフスキーではなく、演技の実践についての演劇理論のスタニスラフスキーである。 ディドロ美学は、アリストテレス美学と同じく、創造の美学なのである。
著者
関連論文
- ディドロ演劇論研究 : 役者の演技の在り方について
- ディドロ『絵画論断章』訳注 : その7
- フランスにおける芸術教育と生涯教育
- 料理芸術本質論(その1) : ブリヤ=サヴァラン美味学の美学的・哲学的考察
- ディドロ『絵画論断章』訳注(その6)
- 料理芸術論序説
- ディドロ『絵画論断章』訳注 : その5
- ディドロ『絵画論断章』訳注 : その4
- ハーゲドルン美学研究-その1- : 近代美学の転回について