公的部門の経営──フランス年金基金のケース──
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
われわれは、資本主義経済体制のもとで生活を営んでいる。そこでの財・サービスは、主に私的部門(企業)によって供給される。しかし、社会全体の利益に資する財やサービスの供給は、公的部門によって行われる。公的部門を運営するためには、通常、まず制度設計がなされ、それに対応する法令が定められ、実際に公的財・サービスを生産する組織、それを市民に提供するルート等が決められる。公的な財やサービスも、市民のニーズに合うものが、できるかぎり効率的な方法で提供される必要がある。それをここでは、経営(management)の問題とよぶ。ここでは、公的部門のうち、社会保険機構とりわけ年金機構の経営問題を取り上げ、公的部門の経営方法のあり方を検討し、そこにある課題を摘出する。とは言え、社会保険機構の経営の仕方は、国により時代により様々である。ここでは日本との対比を念頭に置き、民間法人による経営の伝統が長いフランスの事例を考察対象として、その経営方法を明らかにし、同時にそこにある課題を摘出する。議論は、概ね次のように進められる。まず、フランスにおける国家と民間法人である社会保険機構との関係を確認する。社会保険機構は、国家から独立しているので、その関係のありかたを考察することは、その経営を見る上での前提条件となる。続いて、フランス社会保険機構の内部組織をみる。それは大きくは理事会と事務局に分かれ、前者は、労使共同運営の伝統下にある。ここに内部組織の特徴がある。さらに、フランスにおける近年の年金政策をみる。これも、年金基金の経営を考察する上での前提条件である。これらの前提条件の確認の上で、年金基金の経営方法をみる。その際、国家と年金基金が結ぶ目標管理協約というものを手がかりに、経営上、何が重要視されている事項かを確認し、また、それがいかなる手段で実現されようとしているかを検討する。最後に、この協約に基づく評価と基金経営との関係をみる。