アカマツ林の下層植生の調節とAo層の除去がきのこと土壌生物に与える影響
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概要
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マッタケのシロが20〜30年生のアカマツ若齢林分に高頻度に形成され,林齢とともに生長拡大し,林齢40〜50年を境として消失しはじめ,林齢70〜80年でほとんど消失するという事実は古くからよく知られている。また,若齢林分においてはアカマツが生長するにつれ,林分内の表層土壌に根が増加し,マツタケが菌根をつくりうる若い細根の密度も高まり,菌根形成率が上るものと考えられている。アカマツ若齢林では落葉の堆積も少なく,マツタケと桔抗する落葉分解菌やAo層に生息する菌根菌およびA層にシロをつくる菌根菌などが少ないので,マツタケがシロを形成する余地が残されているものと思われる(小川,1975a, 1975b, 1978)。さらにマツタケのシロは乾燥しやすい場所の土壌微生物が少ない鉱質土層にできやすく,微生物相の豊かな,いわゆる肥沃な土壌には形成されないとされている(小川,1977)。一方,アカマツ若齢林分の下木草を除間伐し,Ao層の量をへらすと,鉱質土層の表層にアカマツの細根がふえ,落葉分解菌やAo層に生息する菌根菌の種類と量が減少し,マツタケのシロが増加したという例がある(伊藤・小川 1979)。これは温度や湿度などの林内環境の変化とAo層の減少とによってマッタケと拮抗する菌がへり,マツタケがシロをつくる空間が生じ,基質となる根が増加したためと考えられた。このような林内環境を変化させる施業はおそらく高等菌類以外の糸状菌や細菌,放線菌,土壌動物など,土壌生物相全体に影響するものと予測された。ことに土壌中やアカマツの根圏で菌根菌と競合しやすいと考えられる土壌微生物については施業による変化とその持続期間を知っておく必要があったので,この調査を行なった。ここに報告するのは林床に強度の手入れを行ない,マツタケ山造成のために行なう下木草の除間伐やAo層の除去などの施業が高等菌類と土壌生物にどのように影響するかをみた結果である。
- 森林立地学会の論文
- 1981-06-30