亜高山帯針葉樹林の植生
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概要
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亜高山帯針葉樹林はアオモ リトドマツ・シラべ・コメツガ・トウヒなど常緑の針菓樹林によって相観を特徴づけられる群落で,上部は高山帯のハィマツ林に,下部は温帯のブナ林に接している明瞭な森林帯である。田中はこれをシラべ帯,本多は寒帯林,シラべ・トドマツ帯,吉良は常緑針葉樹林帯としている。年平均気温では6℃以下,暖かさの指数では15°〜45°-55°の地域に分布する。また水平的には北海道から四国に達し,中部山岳地帯では大きな広がりをもっている。垂直分布は四国で1,800m,中部地方で1,500m,東北地方で800mを下限とし,標高が高いところでは上限は2,500mの森林限界に達する。気候が寒冷,地形が急峻なため林業の生産性は低く,下部の森林帯よりも利用・開発が遅れている。その多くが国立公園など施業制限地域内にあるので極相に近いかたちで保護されているところが多い。このためその植生についても古くから多くの調査研究がある。とくに栗田は昭和30年頃当時ではまだ研究事例の少なかったブラウン-ブランケの標徴種・識別種など組成による群落分類法によって全国の調査資料からこの群落の総括的な分類をおこなった。その後,鈴木,佐々木,宮脇らによって組成的単位が研究された。筆者は蜂屋とともに栗田の亜高山帯林の研究を手伝ったが,最近電算機による群落解析手法を開発し,その計算例としてなじみの深い亜高山帯林の植生解析をおこなったので,その後の群落分類の推移ならびに計算機を用いた別の観点からの考察を加えて報告することにした。
- 森林立地学会の論文
- 1980-12-15