尾瀬地方の亜高山帯森林植生と更新
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概要
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裏日本型気候区において,比較的立派な亜高山帯針葉樹林のみられる尾瀬地方をえらんで,針葉樹天然林および孔状皆伐跡地,単木択伐-風倒木処理跡地などの伐採跡地の植生と稚樹の更新調査を行った。1.針葉樹天然林のほとんどはアオモリトドマツ林によって占められており,他は岩角地などの局所地形に,わずかにコメツガ林がみれるていどである。この地域の林地では,チマキザサやチシマザサなどのササがひろく分布しているが,まとまった針葉樹林の下では,ササの密度はうすい場合が多い。林床植生の特微的な組成種群によって,1)ササ型,2)ササ-ハリブキ-シラネワラビ型,3)ハリブキ-シラネワラビ型,4)ヤマソテツ-コケ型,5)コヨウラクツツジ-コケ型など,5つの林床型を区分した。また伐採跡地でも同様に,1)ササ型,2)ゴヨウイチゴ型,3)ササ-ゴヨウイチゴ型,4)ゴゼンタチバナ型,5)優占種欠除型の5林床型を確認した。2.これらの林床型と稚樹の更新状態との関係を検討したが,ササ型を除いて,湿った林床型で針葉樹の稚樹が少なく,乾いた林床型にうつるにつれてそれが多くなる傾向がみられた。3.一般に,シラべやアオモリトドマツなどのAbies林は,コメツガ林と比べて林冠が疎であるため,稚樹本数が多い傾向がみられる。ここでもアオモリトドマツを主体に,針葉樹の稚樹本数は,ha当り平均11万本余という多数を教えた。4.このような天然林を伐採して,跡地の稚樹の更新がどうなるかを知るために,孔状皆伐跡地と単木択伐-風倒木処理跡地の比較調査を行った。1)孔状皆伐跡地では,アオモリトドマツを主体とした針葉樹の稚樹本数は,他地方の天然林内稚樹本数の平均に相当するか,それを上まわる多数を数えた。しかも残存稚樹のほとんどは,枯れるものが枯れてしまったあと安定定着している感じである。また伐採後のこれらの残存率を,ここでの天然林内稚樹本数を基準に間接的に推定してみると,アオモリトドマツ,針葉樹ともに70%をこえるきわめて高い値を示した。亜高山帯針葉樹の天然更新の重要な鍵は,豊富に存在する前生稚樹を,いかに枯損を少なくして残存させるかにかかっているが,ここで行われた孔状皆伐法は,そういう3点で成功しているということができる。2)単木択伐-風倒木処理跡地では,稚樹の更新状態は他地方での大面種皆伐跡地に比ペるとやや良好である。しかしながら,ここでの孔状皆伐に比にるとかなり劣ることが明らかになった。
- 森林立地学会の論文
- 1976-03-15
著者
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