現世堆積物中に含まれる"Young Kerogen"について
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概要
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四国海盆周辺海域の堆積物は,1)ペリレンが検出されたこと。2)高いCPI値(2.16〜3.67)を有していること,3)厚いタービダイト層で覆われていることから,陸源性の有機物の寄与が多かったものと思われる。これら陸源性の有機物を多く含む堆積物中のKerogenは,元素分析の結果,石炭型に属することが判った。これはfossil Kerogenに関する数多くの研究者の指摘と一致するところである。一方,水月湖の一部及び三陸沖のサンプルは,中間型に属し,これらの地域には,脂質分の供給が多かったことがEOMの分析からうかがえる。いずれのサンプルも,高いH/C,O/Cを有し,いまだ熟成段階は,ごく初期であると言える。ESR評価において,四国海盆のサンプルは,H/C減少方向に対してスピン数の増大,線巾の減少という傾向を持ち,fossil Kerogen likeな性格を有しているといえる。ただ,フリーラジカル生成反応が一次反応であることを考慮すると,時間的に短い10mのコアーの中でこれだけフリーラジカル生成反応が進行するとは,考えにくく,おそらくは,四国海盆のKerogenはrecycled sedimentsによってもたらされたと思われる。一方,湖のサンプルは,高いH/C,O/Cのもとで,すでに高いスピン数,g-値を有している。これはその構造の中にセミキノン構造を有しているためと解釈され,フミン酸に近い性質であるといえる(Rodionova,1967)。Steelink,et al.(1963,1967)によれば,このような,セミキノン構造は,環元的環境下において,熱的作用を伴わずに腐植物質から容易に形成されると考えられている(Figure 8-b)。恐らくは,水月湖及び三陸沖のKerogenは,環元的環境下において腐植物質を経由して作られたものと判断される。環境差により,性質の異なるfossil Kerogen likeなものと,humic acid likeなものが検出されたことは.今後,環境差によるKerogenの性質の差違問題として注目を要するものと思われる。
- 日本有機地球化学会の論文