債権流動化と担保目的の信託
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
信託は、債権流動化について極めて高い適性を有しており、流動化のための「器」として重宝されている。そのような信託の主な特性としては、特に倒産隔離機能が挙げられる。ところで、信託形式の流動化においては、倒産隔離に対する基準はSPC方式の場合と大きく異なるのであろうか。この点、昨今、信託実務家より、信託方式の流動化においては、法形式の相違により、倒産隔離の判断にあたってSPC方式の場合と基本的に異なる基準で考えるべきとの主張が提唱されている。同説は、信託方式の流動化における倒産隔離の問題について、従来混同して論じられがちであった、「信託の成立の有無」に関する問題と「信託の成立後」の問題とを、結果として明確に切り分けたことに十分な意義を有する注目すべき見解であるといえる。しかしながら、流動化の局面において、被担保債権が存在する信託を「担保目的の信託」と位置づけることの前提となる、「信託が有効に成立すれば常に倒産隔離の効果が生じる」との見解には反対である。例えば、委託者がいつでも信託を撤回できて信託財産を取り戻せるのであれば、委託者の債権者が何らかの方法で信託財産にかかっていけると考えることが妥当と考えられる。
- パーソナルファイナンス学会の論文
- 2006-08-31