消費者の成熟化と消費者金融サービス利用
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概要
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昨今の様々な構造改革の中で、国民の「自己責任」が掲げられている。個人が「自己責任」で生活できるようになることとは、消費者として成熟することである。「成熟化」という言葉は、社会経済の様々な場面で用いられているが、「消費者の成熟化」は、「市場の成熟化」と対として考えるべきである。慶応大学の池尾は、「市場が成熟化すると、反復購入者が増加し、その結果、消費の対象に対しての関心が低まり、また購買時の判断力が増す。つまり、成熟した消費者は、関心が低く判断力が高い。」というように、市場の成熟化と消費者の成熟化を関連づけている。しかし、金融商品が購買対象の場合、反復購入者が増えても関心は低下しないと考えられ、成熟化した消費者は、むしろ「関心が高く判断力が高い」といえる。これは、消費者金融サービスの利用であっても同様である。本研究では、消費者の金融行動・金融意識の調査結果を用いて、消費者を金融行動の成熟度により4つのセグメントに分類し、消費者金融サービスの利用についての分析を行った。この結果、消費者金融サービスの利用は、判断力の低い2つの分類で多いことが明らかになった。今後、様々な領域で、個人にとってのリスクが増すと思われるが、金融分野においては、本稿で示したような「成熟化」の度合いを踏まえた消費者と金融機関の関係性構築が望まれる。中でも、消費者としての未成熟層の利用が多い消費者金融サービスの場合に一層の配慮が求められよう。
- 2003-08-08