サービシング、証券化と個人信用情報保護
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概要
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数万件の債権プールが売買されるとき、買い手は客観的に妥当な価格を見積もるため、売り手に信用評価にあたり必要な信用コスト情報を求める。しかしながら信用評価は取引履歴情報だけでは難しい。それらの信用に関連する情報は、貸し手の立場で与信をするために借入申請にあたり収集した情報であり、債権が譲渡されるからといって、個人信用情報までもが買い手に移転されその利用においてよい情報とは限らない。LE件数や借入総額など信用情報機関が加盟員間で共有される情報とともに、少なくとも目的外利用にあたるのであれば、情報流通には債務者の事前同意が求められてしかるべきである。また証券化譲渡により、貸金規制法上のリボルビング付き債権が譲渡され、当初貸し手の地位が債権から切り離されてサービシング権が創設されると、信用モニターをめぐって債務者利益が損なわれる危険が発生する。証券化対象となった債権の債務者の信用情報のモニタリングは、証券化譲渡後譲渡者がサービシング事務の委託を受けている限り、維持・管理が放置されることがなく、信用情報の完全性が維持される。しかしながらバックアップ・サービサーが発動され、信用情報機関の加盟員でないものがサービシングを履行しようとすれば、どのように債務者の信用を維持・モニターしうるのか。サービサーの回収情報は、報告しうる立場にあるのか。また債権が契約上随時リボルビングを認めているため、信用情報機関の情報は、譲渡者により追加貸付のために利用されるが、バックアップ・サービサーに交替されるとリボルビング機能が停止する。当初サービサーである譲渡者は、債権の買い手のためにリボルビングについて信用情報モニタリングについてのサービシング事務受託をされているかに見えるが、バックアップ・サービサーは、信用情報機関情報の利用・共有が認められておらず、信用評価が不可能となり、そうしたリボ機能維持のためのサービスを継続して受託できない。返済しても信用情報の更新がなされず、追加借入できない状況におかれた債務者は、返済意思と動機付けを失い、バックアップ・サービサーの交替で投資家は重大なリスクを負担することになる。何らかの保護が急務であろう。
- パーソナルファイナンス学会の論文
- 2003-08-08
パーソナルファイナンス学会 | 論文
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