有機電子材料の産業への貢献と波及効果 : 材料基礎研究から生まれた大事業(知的マルチメディアシステム,一般)
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概要
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新しい導電材料の研究は、成熟したシリコン・テクノロジーの次世代への期待を担って、長年に亙り進められてきた。東京大学の井口洋夫教授による「有機半導体」の概念の提唱(1954年)を受け継いで1960年代前半に進められた有機半導体の光伝導性の追求は、複写機やレーザビーム・プリンターに用いられた"有機光伝電体(OPC)"の大事業として多大の利益をもたらした。この分野の次の展開は、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)イオン・ラジカル塩の金属的挙動に関する研究で、これも新しい電子部品の開発を促すきっかけになった。電荷移動相互作用(あるいは、電子的ドーピング)により高導電性が発現する、という基本的な概念は、更に、有機高分子材料およびグラファイトを含む炭素材料に適用され、世界レベルで展開された広範な学際的研究により、多くの新しい「合成金属」が生み出された。その結果は、"リチウムイオン電池"や"機能性高分子コンデンサ"など今日のモバイル、ディジタル電子機器にとって欠くことのできないデバイスとして結実した。また、導電性高分子の産学官連携による研究の中で偶然発見された"高品質グラファイト(スーパーグラファイト)"は、最近、小型電子デバイスの放熱材料として利用され、大きな市場を形成しつつある。
- 2010-08-26