太平洋戦争下の日本における医療社会事業実践 : 聖路加国際病院のケース記録の分析
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概要
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本研究は,太平洋戦争下の日本において,聖路加国際病院で欧米の流れをくむケースワークを用いながら行われていた医療社会事業実践について,現存するケース記録の分析をとおして明らかにしようとするものである.受診後入院に至った人々のなかから,医療費支払いが困難であったことをきっかけに社会事業部員がかかわった事例125について,その生活実態を調査し考察を行った.職業はほぼすべての社会階層にわたり,人々の生活は苦しく窮乏化しており,医療費支払いは全般的に切実な問題であった.さらに受診し即日入院した事例が8割を超え,受診を抑制する力が強く働いていた.部員の紹介などにより,公費によって医療費を支払っている場合が6割以上を占めた.またひとたび受療したあとは,できるだけのことをしたいと思っている人々が8割に近く,ケースワークは患者,家族の闘病意欲を支え,医療を継続させることに寄与したと考えられる.
- 2003-11-30