流行という媒体(メディア) : -第一次大戦前のモードとプルースト-
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概要
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『失われた時を求めて」には,第一次世界大戦前パリ最大の文化現象のうちのひとつ,モードの流行が描かれている。この流行現象は,小説内でまず,「現在」の象徴として「過去」との対比を強調し,時のダイナミズムを創る役割を果たす。だが小説のなかにはさらに,プルーストの創作上とりわけ重要な流行のもう一つの対立項が隠されている。「文体(スタイル)」だ。作家を目指す主人公が自分の文体(スタイル)をみつけるまでの『失われた時を求めて』の物語はじつは,その物語にとってまさに脅威(リスク)である流行という媒体によって脅かされながら,運ばれていく。流行はプルーストにとって媒体(メディア)なのだ。そして流行は,社会の変容を促し物語を動かす他の要素と相互浸透的に結びつき,連動して,小説全体を一種の網目構造(ネットワーク)にする。だからこそ,表面的に読めば言及回数の少ない現象でも,全体の流れのなかで重要な役割を果たし,細部の考察から全体の構造にたどりつくことができる。プルーストはこの網目構造のなかに同時代の現象をつぎつぎに取り入れながら,時を創り批評的に生成し続ける作品を書いていった。
著者
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