飲料水などのミネラルの神経・骨への影響 : 飲料水用の素材として海洋深層水を考える(シンポジウム:駿河湾深層水の海洋学)
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概要
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CaやMgは中枢神経組織(CNS)や骨で重要な役割をもつ.ミネラルと関係するCNSの変性疾患として筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン痴呆症候群(PD)が挙げられ,多発地のグアムや紀伊半島南部の環境分析で判明した,河川水や土壌中の低Ca・Mg,高Alが,それらの病因と推定されている.今回,低Ca・Mg,高Al食を負荷してラット大腿皮質骨,腰椎骨梁骨やCNSと,紀伊ALS症例のCNS,また最近,紀伊半島ALS多発地に発生している脊椎靭帯石灰化症の脊椎骨と脊椎靭帯のMg,Ca量を分析し,それらの類似性について検討した.偏食ラットの大腿骨,腰椎骨のCa,Mg含有量は対照群に比し有意に低下し,脊椎靭帯石灰化症の脊椎骨でも対照群に比較し有意にCa,Mg含有量は低値を示した.ALSと偏食ラットのCNSのCa含有量は増加,Mg量は低下した.また同様に,脊椎靭帯石灰化症の脊椎靭帯のCaは蓄積増加,Mg量は低値であった.以上のことから,ALS間様,多発する脊椎靭帯石灰化症が,環境要因の影響を受け,さらにその他のミネラル関連疾患が存在する可能性が示唆された.一方,全国の県庁所在地の水道水を集め,現在は法的に測定が義務付けられていないCaとMg濃度を分析した結果,ミネラルの含有量に大きなバラツキが判明した.また,いわゆる名水の分析を行い,ミネラル濃度が水道水よりも低値が多いことも分かった.本研究結果を踏まえて,脱塩海洋深層水にごく微量の濾過滅菌海洋深層水や,海洋深層水の苦汁成分を加えて硬度調整した飲料水についてもコメントした.
- 2002-08-21