1987年12号台風による沿岸災害の概要(シンポジウム:気象擾乱に対する沿岸海洋の応答)
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概要
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1987年8月30日に長崎県五島沖を通過した台風12号は,長崎県下の水産関係施設を中心に総額980億円という甚大な被害を与え,とりわけ漁港については,100港234件282億円という漁港災害史上未曽有の額となった.台風12号は,大型で強い勢力を保ち東シナ海を北上し,北緯30度を通過後も中心示度940mbで時速35km〜40kmの速い速度で福江市西70kmを北東に進んだ.この結果長崎県下各地において風速と最低気圧の極値を更新した.強い風と台風の速い速度,そして台風のとったコースにより,激浪が特定の向きの沿岸と港に作用した.作用時間は30日午後11時〜午前3時までの4時間の短い時間であった.各地点の来襲波の諸元はウイルソン法により推算した.長崎県三重崎沖では,波高14.4m,周期14.4secと強大な波浪が推算された.漁港施設被害の特徴は,台風のコースと速度の速さから,壱岐,対馬,五島の東岸及び西彼半島,島原半島の西岸に被害が集中し,しかも港の向きがSEE-SE-SSE-Sの港が被害を受けている.作用力が強大で短時間の作用であったことから、防波堤の被害件数が多く,壊滅的な被害を受けた防波堤があったが,陸上施設の被害は少なかった.大きな被害を受けた港は,180億円の新長崎漁港をはじめ浜串漁港,佐尾漁港,木津漁港,久喜漁港,嵯峨島漁港,大宝漁港,前津吉漁港の8港で232億円の被害にのぼり,漁港被害の82パーセントを占めている.特に新長崎漁港の被害は壊滅的で今後の施設設計を考える上で大きな教訓を残した.
- 日本海洋学会の論文
- 1989-08-31