広島湾北部の透明度の経年変化とその支配要因について
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概要
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近年,水質汚染に関連して瀬戸内海の透明度の低下が論議されている.透明度の意味するものは複雑であり,最も関連のある水中懸濁物も発生源別にみると多岐にわたるので,広島湾北部の夏秋の透明度の経年変化に関与する要因について検討した.1)この水域の懸濁物質は,陸上より流入した栄養塩類によって増殖した植物プランクトン,並びにその分解細片が主要な部分を占めている.また,降雨による出水の多い年には無機態の懸濁物の割合が増加する.2)広島湾北部の夏秋の透明度の経年変動は,一般的には懸濁物の形成に最も関与する窒素の流入量と,沿岸水塊の維持,拡散に寄与する風力の2要因の経年変動によってかなりの部分が説明できた.3)この水域への窒素流入量のうち,生活廃水,事業場廃水によるものは年々増加の傾向にあり,植物プランクトン増殖条件を満たしやすくなっているが,夏秋においては主要河川である太田川による補給の寄与率が最も大きく,また年変化も激しい.
- 日本海洋学会の論文
- 1977-02-28