【招待講演】予測市場による意思決定支援とその実現に向けての研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
予測市場とは,形式的には,対象とする何らかの変数の未知の実現値に依存して事後的に価値が決まる証券 (予測証券と呼ぶ) を取引する一種の先物市場である.これは,狭義には,時々刻々と変化する予測証券の時価から,対象変数についての動的な予測を得る,一種の予測ツールとして機能させることができる.また,広義には,市場メカニズムのもつ情報集約機能を利用して市場参加者の集合知を表出化させる仕組みであるともいえる.既に海外では,多くの企業で,プロジェクトのリードタイム予測,製品の販売量予測などの予測問題から,アイディアの発掘や評価に至るまで,社内予測市場の様々な活用事例が報告されている.また,日本企業の間でも,最近,予測市場に対する関心が少しずつ高まってきているようである.例えば,著者らが 2010 年 5 月から 7 月にかけて行った調査では,予測市場に関する情報収集を開始している日本企業が相当数存在し,中には,既に試用を開始しているところもあることがわかった.そこで本講演では,予測市場を企業などの組織体において,広い意味での意思決定支援に活用しようとした場合に,どのような活用形態の可能性が考えられるのか,また,それらを実現するためにどのような課題があるのか,について議論してみたい.具体的には,まず,モノとしての集合知 (Collective Knowledge) に注目するのか,それともコトとしての集合知 (Collective Intelligence) にまで期待するのかの軸を横軸にとり,支援したい意思決定に関する評価モデルの充実化を目的とするのか,それとも解空間拡張の支援までを視野に入れるのかの軸を縦軸にとって,2×2=4 象限からなるモデルを提示し,それによって,予測市場に基づく集合知活用の可能な形態を把握・分類してみる.続いて,各象限に対応する活用形態ごとに,それぞれそのためのアプローチのイメージを示すとともに,それを実際に実現するために解決すべき課題を整理する.また,個々の活用形態の実現に向けての研究についても,著者らの取り組みを中心に紹介したい.
- 2010-10-22