資料保存(V. 図書館資料論,<特集>300号記念「図書館・図書館学の発展-21世紀を拓く」)
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概要
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我が国図書館界において資料保存への本格的な取り組みが開始されたのは,酸性紙問題が広く知られるようになった1980年代のことである。近代の抄紙技術を用いて製造された用紙は耐久性に乏しく,紙中の酸の作用により,わずか50〜100年でボロボロになってしまう。短命な酸性紙の問題を我が国で最初に紹介したのは,金谷博雄氏の『本を残す-用紙の酸性問題資料集』(1982年)とされる。この文献が刊行されてからおよそ20年を経て,資料保存問題への認識・方法論は着実に浸透しつつある。また,それを支える技術面においても数々の成果が生み出されている。しかし,全国,地域,個々の図書館,それぞれのレべルにおける組織的・体系的な保存対策の立案・実施という観点からみれば,課題は多い。一方,1990年代以降の情報処理・通信技術のめざましい進展により,図書館においてもCD-ROM形態やインターネットを通じて頒布される電子出版物が多くの図書館で収集・提供されている。これらデジタル技術を用いて記録・頒布される資料をどのように収集・保管し,長期に保存するか,資料保存の分野においても新たな問題領域が出現している。本稿においては,1993年以降の文献をもとに,「酸性紙問題への取り組みの進展」及び「新たな問題領域への対応」という2つの観点から,我が国における資料保存対策の現状を概観してみたい。
- 日本図書館研究会の論文
- 2001-09-01
著者
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