コントラスト空間分布を効率よく伝える機構としてのV1野高次受容野構造(脳活動の計測と解析,一般)
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概要
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外界の情報が脳内でどのように表現されているのかを理解することは,システム神経科学の大きな目的である.形,動き,奥行きなどを知覚するための最も強力な手がかりとなる画像の輝度分布は,脳視覚情報処理の第一段階において,ガボール関数で近似される局所のサイン波成分に分解されることで,効率よく表現されている.一方で,画像のコントラスト成分だけを利用しても,このような知覚は十分可能である.したがって,コントラストの空間分布もまた,ガボール様関数に基づく効率的な分解表現が行われている可能性が考えられる.われわれは今回,このようなコントラストの分解表現が,脳情報処理の初期段階で行われている可能性を検討した.第一次視覚野の多くの細胞は,古典的受容野の周囲に抑制領域をもつ,このような細胞は,最適なサイン波の高コントラスト領域が古典的受容野に,低コントラスト領域が周辺領域にマッチするときに最もよく応答する.したがって,2つの領域は,コントラスト成分を分解表現するための基底関数として振舞う高次の空間受容野と捉えることができる.われわれは振幅変調グレーティング刺激を用いて、古典的受容野と周辺領域の全体をマップ化する新しい手法を考案し,これをネコ第一次視覚野に適用した(1).調べた細胞の多くは,古典的受容野と周辺領域が同じ向きに伸びたガボール型の高次受容野構造を示した.2つの領域が伸びる向きやサイズは細胞により異なっていた.以上の結果から、第一次視覚野の細胞群全体により,コントラストの空間分布が,さまざまな方位や空間周波数のガボール様成分に分解されて,効率よく情報伝達されていることが示唆された.
- 2010-07-20