新しい公共と利益集団からみたマネジメントの役割
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概要
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「新しい公共」においては、行政さえ一つの利益集団(影響力集団・圧力団体・ステークホルダー)にすぎない。そこは複数の利益集団が、それぞれに自己の主張を繰り返す場である。もはや公共の場を単独でコントロールできる組織はいない。新しい公共を動かすのは、そこに関わる全ての集団である。それらは政府か企業か非営利組織であるが、ときには集団に匹敵する影響力を持った個人でもある。この複数の利益集団が構成する新しい公共において、公益目的を掲げ、それを達成しようとするマネジメントとはどのようなものか。公共の場においては、自己生存を目的とした経営だけでなく、利益集団の調整を含んだ複雑なマネジメントが要求される。昨今、公共の場で活躍する全ての「公共マネジャー」は、想像を遙かに超えた利益集団の気まぐれな行動に困惑している。当初、素朴な気持ちから思いついた「公益の実現」は、あまりにも険しく長い道のりであったと気づき始めている。公益を志した者は、その実行段階で、次々に現れる驚くべき困難のために呆然とし、かつ焦燥する。ついには公益を志したときの意欲も意義も失ってしまう。複数の利益集団から構成されている「公共の場」を、効果的に動かす実践的マネジメントが必要とされるのは、それ故である。長きにわたって蓄積されてきた経営学の知見を、公共空間における各種学識と融合させ、新たなマネジメントを組み立てる必要がある。そしてそれを現実に活かす責務が、現代の経営学にはあると考える。
- 2010-10-29