取締役ネットワークにみる経営者の取締役制御 : アメリカ投資銀行5社の取締役構成を通じて
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概要
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金融危機によって倒産や経営不振に陥ったアメリカ企業、特に金融機関の経営者は自己利益を優先して追求する「経営者の暴走」、「取締役会の機能不全、特に経営者監視機能の不全」「取締役会の機能不全」が起きていたと各方面から批難された。この機能不全を取締役と経営者との間の蜜月関係に原因を求める考えがある。蜜月関係に関する先行研究は「経営者と取締役との企業外部における関係とそのネットワーク」から理解することに答えを求めた。一方、取締役会で「既に時を経て醸成された人間関係の連なり」という企業内部で培われた「取締役ネットワーク」に焦点を当てる必要がある。この中で経営者は取締役を制御し、高額報酬を実現するのである。したがって、金融危機以前に存在したアメリカ投資銀行大手5行の取締役会の構成を通じてCEOが株主利益よりも自己利益を優先して追求するシステムとしての「取締役ネットワーク」を構築し、役員報酬の高額化を達成する一面があることを分析・考察した。各行において在任年数10年を超える古参取締役が存在し、彼らの多くが指名委員会や報酬委員会の委員に就くとともに時が経つにつれ同様の古参取締役を生み出していることが分かった。一方で短期間取締役を務める者は報酬委員会や指名委員会(または指名・企業統治委員会)委員の座に就くことはあまりない。委員会報酬の高額化とともに役員報酬の高額化が生じたことから「取締役ネットワーク」が報酬の高額化を達成していることが分かった。
- 2010-10-29
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