世代間対立の時代の公共政策
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概要
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本論文の目的は, 少子化現象の本質的原因を明らかにすると共に, 出生率回復のために真に有効な政策を提案することにある. 産業革命後, 約 200 年の工業社会においては, 労働者と資本家の間の対立が最も重要な社会階層対立であったといえよう. 1970 年代の先進国では資本主義経済に社会主義的修正を加えた福祉国家型資本主義経済がほぼ完成したと考えてよかろう. その結果, 1980 年代以降は, 労使紛争が急激に減少すると共に, 労働組合組織率も急速に低下してきている. 労使対立はもはや社会問題としての重要性を失ったかにも見える. 代って, 世代間の対立が重要な社会階層対立軸として脚光を浴びつつあり, 環境・資源問題と少子化問題が主要な社会的・経済的問題となった.この世代間対立が深刻となった原因として, 家計の意思決定が後続世代の効用を重視するダイナスティ仮説から, 自己の世代の効用をもっぱら重視するライフサイクル仮説に大きく変化したことが重要である. 資源も労働サービスも現役世代重視に配分されると, 環境や資源は後続世代に十分残されなくなり, 後続世代の育成・教育が疎かになるのである. 厄介なことに後続世代は現役世代ほど, 雄弁ではないから, 現役世代が, 努めて後続世代の立場に立った政策を実行することが求められる. 少子化を押し止めるためには, 公共政策の対象を個人ではなく家族に移すことによって, 「家族の生活保障機能を再構築する」 ことが必要である. 具体的政策としては,(1)所得税, 住民税の税率を家族一人当たりの富裕度を基準に決めること,(2)相続税における基礎控除を減額する一方, 相続人一人当たりの控除を増額すること(3)社会保障給付も家族を基準に再構成すること(4)児童手当財源を含めて 「出産育児保険」 を創設し, 家族を形成しようとしている若年家計を支援することを提案したい.
- 2007-08-31
著者
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