居座る集落、腰かける人々 : マレーシアの都市集落の事例より(<特集>都市に(が)居座ること)
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概要
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本論文は、マレーシアのコタキナバルにおけるある都市集落の「居座り」を記述することで、設定した未来に合わせて現在を改変する仮想の枠組みが持つ時間が、実際の社会においていかなる位相を占めているかを考察することを目的としている。ここでいう居座りとはホメルズ[HOMMELS2008]が提唱したオブデュラシーという概念に依っている。ホメルズは都市や都市の一部が、それを変えようとする力学にもかかわらず、そこに居座ってしまう側面に注目し、その持続を可能にするネットワークを描き出す。本論文では、現代マレーシアにおいて経済発展と国民統合を掲げた2020年ヴィジョンの元で進められる都市空間への介入とそれへの反応としての居座りを事例として取り上げる。2020年に向けてなくしていくべきものとされたスクオッター集落は、外国人のものであれば撤去され、マレーシア人のものであれば、住宅プログラムの元で再定住が促される。しかし、こうした特定の時間性を持って現実に働きかける政府の企図に対して、既存の集落は地位を変えるか、あるいは限られた時間だけにせよ居座ることによって、元の姿のままにとどまる。こうした居座りを記述することを通して示されるのは、発展した経済と統合した国民を仮想的に設定し、社会をそのモデルに合わせて改変していく政府のプロジェクトが、意図されていたのとは違う形で、一時的に結実している姿である。
- 2010-09-30
著者
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