地域ブランド研究における研究領域構造の分析 : 論文書誌情報データベースを活用した定量分析の試み
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概要
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我が国において,地域ブランドに関する研究が本格的に始められるようになり5年ほどが経過した。さまざまな分野から研究レポートや論文等の成果が蓄積され始めている。しかしながら,現在のところ,どのような研究分野からのアプローチがあるのか,それぞれはどのようなテーマでおこなわれているのか,また,研究領域間にはどのような関連性があるのかなど地域ブランドにおける研究領域の構造把握や体系化は十分におこなわれていない。本研究では,今後の地域ブランド研究を進める上で有意義な視点を提供するため,地域ブランド研究における研究領域構造の分析をおこなった。始めに,地域ブランドの発生からその構築プロセス・課題等についてまとめながら,先行研究で示される研究領域の定性的な分析をおこなった。続いて,より客観的な視点から研究領域構造の分析をおこなうため,論文書誌情報データベースより論文タイトルや論文雑誌名を抽出し,定量分析をおこなった。具体的には,テキスト・マイニングを用いて地域ブランド研究の論文タイトルに含まれる「キーワード」と「雑誌名」の対応分析をおこない,研究領域間の関係性や研究領域間に共通する視点,独自の研究視点の有無について分析をおこなった。本研究の結果,定性的な分析からは,様々な領域からのアプローチに加え,地域活性論や合意形成論等の研究視点が必要な可能性が示唆された。しかし,定量的な分析結果からは,様々な専門領域の存在があり,一部特徴的な研究領域や研究視点が見出されたものの,全体的には地域ブランド構築の必要性や課題の存在を指摘するに留まる研究が多いことが示された。このことから,地域ブランド研究において専門領域独自の視点を用いた研究は未だ十分に蓄積されていないと考えられる。しかしながら,本研究で得られた知見からは,どのような領域から関心がもたれているのか,またどのような研究者が中心的存在であるのかなどについては十分な示唆も得られている。これらデータは,今後,地域ブランドを研究しようとする研究者や異なる領域間での連携を考える研究者にとって有益な情報になると考えられる。
- 2009-03-15