中小企業再生の現場から : 今、中小企業経営に求められるもの(第3報告,統一論題,日本の中小企業の発展と課題)
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概要
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2009年度の法的整理による倒産数は12,866件。しかし、経営を断念して姿を消す「消滅企業」は法的整理による倒産の約2倍にあたる27,191件に達した事が帝国データバンクから発表された。この消滅企業の大半が中小零細企業であるが、適切な再生措置をとっていたならば経営破綻から免れた企業は少なくなかったと思われる。しかし、現実は中小企業に対する十分な再生支援体制は整っておらず、再生専門家の数も限られているという厳しい状況である,また、中小企業再生において取り得る手法は多くの制約によって限られている。その上、大企業とは違い、中小企業においてはB/S面だけの改善だけでは単なる「延命」処置にすぎず、P/L面での改革、特に売上・粗利益の向上による抜本的な収益力再生が求められている。しかしながら、金融機関や再生専門家の多くが大企業に対してより効果があるB/S面改善主体の再生手法による中小企業再生を行っており、中小企業経営者もキャッシュフローの改善を持って会社が軌道に乗ったと錯覚し、二次破綻の危険性を残したまま再生完了としているのが現状である。今回の報告では、抜本的な中小企業再生の為にはP/L面での改革、つまり「ビジネスモデルの再構築」が不可欠であり、中でも「川下ビジネス」体質の会社はそこからの脱却、つまり「川上ビジネス」への転換が急務であることを述べ、それを可能にする為の社内風土構築の必要性と「第三者を介したホットライン」導入の有効性を紹介し、さらには再生専門家不足を解決する為に大学(大学院)が積極的に関わることの必要性を訴えたい。
- 2010-06-25