病気・障害のある子をもつ親の「生きられた経験」の研究の意義 : ポジティブな意味を求めて
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概要
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歴史的に,病気・障害のある子をもつ親の経験の研究は,Olshansky(1962)の慢性的悲哀をはじめ,低い自尊心,うつ,などネガティブな解釈が主流であった.本稿では,そんな親の経験の主要な解釈の歴史を,(1)障害受容論,(2)ストレス対処理論,(3)ライフサイクル理論,(4)社会学的アプローチ,の4つに分けて紹介する.そして,1980年代から出始めた,質的研究法を使った直接的な親の経験の聞き取りから得られる,「ポジティブな親の経験」の研究(Larson 1998;Staintonら1998;Kearneyら2001)を紹介する.ネガティブな面を抑えて,ポジティブな面を強調することは,病気・障害とともに生きていく家族に力強いサポートを与えるだけでなく,現在困難な状況にいる家族に希望を与えることにもつながる.親たちの「生きられた経験」を丹念に聞き取り,親の「ポジティブな経験」を知ることによって,病気・障害とともに生きていく際の対処方法,すなわちベストプラクティスを発見することになり,そこに研究の意義が存在するのである.
- 2009-05-31