ハイアールにおける研究開発者むけの「競馬経」式人事管理 : 「競争・公正」を支えるメカニズムを中心に
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概要
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1979年の中国における経済改革開放後、中国の家電産業は大きな発展を遂げた。2010年現在、中国の消費者のニーズの多様化に伴い、顧客のニーズに応えた高品質の製品を低コストで生産できるか否かは、企業の存続に関わる最も重要な課題となっている。そこで本稿では、顧客の多様なニーズにあわせ、ユニークな製品を提供しているハイアール・グループの人事管理に注目した。ハイアールでは、研究開発者に対して、迅速に顧客のニーズに応える製品を開発させるために「競馬経」式人事管理を実施している。ハイアールの研究開発者むけの「競馬経」式人事管理の特徴である「競争・公正」の内容を明らかにし、その根底に流れる「競争・公正」を支えるメカニズムを考察することを目的とする。本稿では、多くの研究者の先行研究と筆者自身による現地ヒアリング調査の結果を踏まえて、ハイアールの研究開発者を対象にした「競馬経」式人事管理を支える価値観やその効果について考察している。その結果、次のような結論が得られた。まず、「競馬経」式人事管理は、様々な人事施策が工夫されて「公正」を体現している。従業員の実績や仕事成果を根拠として選抜を行ったり、ランキングをつけたりして、従業員間の「競争」を誘引している。また、これらの特徴の上に、研究開発者たちを具体化された「公正」の下で「競争」させることによって、その「競争」の結果として、従業員の自己有能感をもたらすメカニズムがはたらいていることを導きだした。
- 2010-04-30