ドイツ新教育運動における協同体学校に関する研究 : 「総合学習」の授業実践を中心に
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概要
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本研究は,ドイツ新教育運動期に設立されたハンブルク協同体学校の授業実践の特質をテレマン街学校の「総合学習」実践を通じて,明らかにすることを目的とする。協同体学校の「協同」概念は,(1)子どもにとって身近な地域社会と密接に結合すること,(2)子どもの内的な創造的個性を支援することで,教室内に新たな関係性を築くこと,(3)通学制によって教師と保護者間に相互主体的な関係を作ることを意味していた。協同体学校設立に当たり,「協同」概念に基づいた教育理念として,子どもの自律的・創造的活動と知的な学びを同時に実現することが掲げられた。そして,教師には授業実践に対する大きな自由裁量が認められ,一人ひとりに応じた柔軟な教育を展開することが可能となった。テレマン街学校では,学校内外の「総合学習」においてこの理念を,子どもの側から柔軟な学習計画や教材の自主編成を構想することによって具体化した。そして,それは,子ども・教師・保護者間の対話的実践に基づいて構築された,目的協同的な関係に支えられていた。また,その際(1)カリキュラムを固定的なプランとしてではなく,柔軟なプロジェクトとして位置づけたこと,(2)総合学習の意味する総合を,教科を寄せ集めた合科的なものとしてではなく,目的に向かって教科や活動を協同させるという意味で捉え直した点に新しい視座を見出すことができる。
- 2004-03-31