未知なるTiradelphe schneideriのオス : 蝶のジクソーパズルにおける失われた一片
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概要
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マダラチョウ亜科における科学的コミュニケーションとは,♂が特別に集めた植物の二次的化合物に由来するフェロモン成分,ならびに複雑な雄発香器官のシステム(androconial system)[ヘアーペンシルや性斑]を含む,いくつかの顕著な特殊化のことを意味する.マダラチヨウ族においては,大部分の種の雄発香器官は,求愛時に「媚薬」として用いられる「フェロモン移送粒子」(PTPs)を生成する.この「フェロモン移送粒子」は,属が異なれば,とくにDanausとTirumalaの間では,まったく異なった方法で生成され,この粒子が平行進化によって生じたことを強く示唆する.今のところ,これについて何らかの説明を与えることはできないが,もしできるとするならば,このような特殊化したシステムが進化的形質転換系列をつぎつぎ経てきたという可能性だけである.Tiradelphe schneideriは1984年マダラチョウ族に含まれる1属1種の新種として記載され,いまだにソロモン群島ガダルカナル島のPopomanaseu山で得られた2♀の標本が知られているのみである.分岐学的分析によると,TiradelpheはDanausとTirumalaとともに1単系統群に暫定的に含められた.それゆえ,未知なるTiradelpheの♂の発見は,これら3属の蝶の進化に,かれらの化学的コミュニケーションとともに,新しい解決の光明を投げかけるものと期待される.この珍しい昆虫を求めて,ソロモン群島を訪れることができる鱗翅目研究者がもしおられたら,ぜひ著者まで連絡いただきたい.この蝶のパズルを解くのに必要な,失われた情報を集めるための,最上の方法について話しあえれば幸いである.
- 1990-10-20
著者
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Vane-wright R.
The Natural History Museum
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BOPPRE Michael
Forstzoologisches Institut der Universitat Freiburg
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Vane-Wright R.I.
The Natural History Museum