フィリピン,ミンダナオ島産Ypthima属の1新種
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概要
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フィリピンのミンダナオ島からウラナミジャノメ属Pandocus種群の1新種,Ypthima sensilisを記載した.本種の特徴,習性について述べ,その系統関係について考察を行った.本種は,後翅裏面1b,2,6室に眼状紋をもつこと,前翅翅脈R_1はr-m横脈手前基部よりから生じること,雄交尾器のvalvaは細長く,中央でねじれ,先端で尖ること,valvaの基部は背方に幅広く伸長することなどの諸点から,pandocus種群に属する.しかし本種には,ふつう雄交尾器のsaccus腹面に切れこみを欠くという,特有の形質がみられる.Saccus腹面の切れこみは,pandocus種群の固有新形質の1つと考えられていたもので(SHIROZU & SHIMA,1979),本種はこの固有新形質に関しては,もっとも原始的な状態にあると考えられる.本種はミンダナオ島の山地帯に分布し,フィリピンに広く分布するY. sempera FELDER(2種を含むと考えられる)に近似し,またこれと混棲もしているが,以下の諸特徴によって後者と区別される:前翅は尖り,地色はより濃いこげ茶色,雄前翅表の性標はよく発達し,前頂部の眼状紋の黄環の基半を覆う.後翅裏面は白化し,波状紋は細かく,1b,2,6各室の眼状紋は大きい,雄交尾器では,uncusはやや長太く,valvaの竿状のampulla+harpeは短く,多くの個体ではsaccus腹面の切れ込みを欠く.雌交尾器では,lamella antevaginalisの中央突起の先端はあまり広がらずに2分し,lateral lobeは発達が弱く微毛を欠く.Lamella postvaginalisの膜状突起は短く,幅広くその先端部は丸い.本種は森林性で,Y. semperaに比べ観察者の接近などに対してより敏感に反応し,飛翔する.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1982-12-20