日本産Eurema属2種の季節型と成虫休眠性について
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概要
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Eurema属の種の分布はそのほとんどが熱帯地域に集中しており,またその近縁属も熱帯に分布するものが多いことから本属の起源はおそらく熱帯地域であったと考えられる.しかし若干の種は温帯北部(たとえば日本の本州や北米中部)まで分布を拡げており,これらの種に共通してみられる特徴は顕著な季節型をともなう成虫越冬性を獲得していることである.そして成虫越冬をおこなう季節型が秋型(乾季型)のみであることから,これらの種が北進するために,季節型の果した役割は重要であろうと考えられる.日高・会田(1963)によれば,キタテハPolygonia d-aureum Linnaeusでは季節型は主に幼虫期の日長によって決定され,秋型は卵巣成熟度や寿命の点で夏型と異なり成虫休眠型であることが明らかにされた.このように季節型の生態的・生理的側面を把握することは北方への分布拡大を理解するために重要であろうと思われる.そこで著者は日本産Eurema属のキチョウE. hecabe mandariva de l'OrzaとツマグロキチョウE. laeta bethesba Jansonを材料にして,両者の光周反応および夏・秋型の卵巣成熟度,寿命の相違を比輸した.その結果,予備的なデーターではあるが,これらの点について両種間にかなり顕著な相違が認められたのでここに報告する.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1974-04-30