アンリ・マチス『ジャズ』のテクストをめぐる試論(1)
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概要
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マチスによる『ジャズ』は、自身が書いたテクストと切り紙絵による図像とからなる総合芸術である。テクストに関してマチスは内容より視覚的効果を重視したが、テクスト分析の結果、そこには脱自我性と没入性という両義的特質が認められた。マチスが期待した可視的効果は自身による手書き文字に支えられたが、手書き文字を採用した背景には『ジャズ』と同時期の挿絵制作での試行錯誤があり、そこには挿絵とテクストとは等価であるべきという思想が潜んでいた。手書き文字とは文字であると同時に線そのもの、つまり画家の手の跡という意味で素描でもあり、『ジャズ』ではテクスト頁の筆跡が形成するアラベスクと図像頁の鋏による裁断跡が形成するアラベスクとが相補的に連動して、両頁は等価と成り得ていた。一方『ジャズ』の図像主題もまた両面価値的な可変性を特質としていた。テクストと図像とは可視・不可視のレベルでパラレルな関係を有していたのである。
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