二つのキッシンジャー像 : 「デタント」推進派の中心人物に関する研究動向
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概要
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Jeremi Suri, Henry Kissinger and the American Century (Cambridge, MA: The Belknap Press of Harvard University Press, 2007).Mario Del Pero, The Eccentric Realist: Henry Kissinger and the Shaping of American Foreign Policy (Ithaca; London: Cornell University Press, 2010). ジェレミー・スリとマリオ・デル・ペロの上掲書を中心に、キッシンジャー米国元国務長官の外交政策やデタント(Dtente)についての研究動向を検討する。スリやデル・ペロの研究は、キッシンジャー論やデタント研究に文化史的・社会史的視点を導入した点で注目される。両者はこの視点を通じて、米ソ間のデタントを推進した既存の政治勢力と新しい社会勢力との対抗関係を指摘している。論争点としては、スリがキッシンジャーの政治行動とドイツ生まれのユダヤ難民としての経験の結びつきを指摘するのに対し、デル・ペロは冷戦の論理やアメリカの知的環境がキッシンジャーの政治行動に与えた影響を重視している。本論は両者の論争を踏まえて、米ソ主導のデタントへの対抗勢力を議論する際に、各国での市民運動を担い手とする新しい社会勢力の台頭を指摘するだけでは不十分であり、米欧間の緊張関係も考慮する必要性があると主張するものである。
著者
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