都市の風土色に関する研究 : ドイツにおける建築物色彩の定量的分析をもとに
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概要
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本稿は,ドイツの都市景観における建築物色彩を対象とした研究である.建築物色彩を対象とした研究は主として建築学を中心に行われており,その方法論は,(1)測色調査による建築物色彩の定量的把握,(2)SD法を用いた色彩イメージ調査,に二分できると考える.こうした研究は枚挙に遑がないが,日本以外の国を対象に,複数の都市について都市内部の構造や建築様式まで考慮して測色調査を行った研究は少ない.その際,重要になるのは,地域に特徴的な色彩を持つ建築物がその場所に出現し,現在まで維持されてきた要因である.とりわけ,前者としては地域における建築資材の制限が重要であり,後者については法令による色彩景観の保全や人々の色彩をめぐる価値観・認識が関係する.建築物色彩の定量的把握に加え,その形成過程など時間的な枠組みを考慮することに意義があると考える.ドイツの都市では,歴史的景観の保全をめぐる法制度が充実しており,色彩景観に地域性がみられる.そのため,本稿で調査・分析の対象とする意義があると考える.研究の目的は,(1)都市景観に現れる建築物色彩の定量的分析により色彩景観の特徴を把握すること,(2)色彩景観の形成過程を明らかにし,都市の風土色について論じることである.具体的な調査・分析として,目的(1)については,都市内部の形態と建築様式により分類した建造環境について各々に建築物色彩を定量的に調査した.また,目的(2)については,色彩景観の形成と変化の要因を都市の発展により生じる諸現象からとらえ,それによって風土色の概念の考察を試みた.
- 2010-06-01