「宗教をもたない民」の改宗 : フランスの「ジプシー」の事例より
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概要
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本稿では、フランスで「ツィガン(ジプシー)」と呼ばれている人々の、ペンテコステ派キリスト教への大規模な改宗運動を例に、改宗という行為の背景を考察する。従来のジプシー研究では、本質主義的なジプシー文化論と、形式主義的なジプシーの「宗教利用」論が交錯し、ジプシー社会における宗教の位置づけは矮小化されてきた。そこで本稿では、ジプシーの改宗を、集団と個人の選別意識との相関から論じることで、従来尚のジプシーの宗教研究、改宗論一般に新たな視座を提供する。具体的には、4章でジプシー福音宣教会(MET)による宣教が、ジプシーが対峙してきた様々な集団間の差異を、キリスト教の論理によって超越させたことにより改宗が進んでいる点を論じる。5章では、集団間関係に収斂されない場で生じている個人と神との結びつきについて触れ、その結びつきが実際にジプシー社会の中で生かされたことが、大規模な改宗運動を支えている点を指摘する。
- 2000-06-17