地方都市における公共交通の新機軸とその課題(<特集>地域政策と交通問題)
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概要
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地方都市において,公共交通の経営が厳しいことは周知の事実である.しかし,近年LRTやコミュニティバスなど,公共交通の新機軸導入が議論され,実際に導入された例もみられる.本稿では,これまでに導入された公共交通の新機軸を概観し,地方都市が抱える公共交通の課題について検討した.その結果,4つの課題が指摘できる.第1に,公共交通を活用したコンパクトなまちづくり,中心市街地活性化のためには,都心部の自動車規制と歩行者空間の整備,トランジットモールの導入が求められる.第2に,各交通機関が適切な輸送力やその機能を発揮できる都市交通システムを構築することが必要である.LRTの場合は,都市の幹線交通と位置づけ,中量輸送機関としての機能を果たさせるとともに,末端部ではバス,自家用車,自転車などと容易に乗り換えできる設備を整備して,これらとの連携を図る.第3に,公共交通の利用を促進する運賃制度を導入することである.ドイツの運輸連合においては,共通運賃制度,環境定期券など,利用者を優遇する制度が整えられているからこそ,自家用車から公共交通への利用者移行が進んだ.第4に,公共交通の新機軸導入決定や既存路線の存廃の議論のためには,乗客数などの利用パターンだけでなく,利用者の利用状況の調査,沿線住民やそれ以外の市民についての公共交通に対する評価や意識調査が不可欠である.
- 2009-03-30