ライフコースからみた1960年以降の韓国女性の初就業時移動
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,居住歴や職歴の追跡調査である「韓国労働パネル調査」のデータを用い,戦後韓国社会で女性就業がいかに始まり,いかに変化したのかを,出身地と初就業地を関連づけて分析した.分析にあたってはライフコース概念を取り入れ,各ライフイベントの発生タイミングの時代的変化を明らかにした.韓国は地域間の経済成長率が異なり女性は就業時に居住地移動をともなうために,地理的移動の概念を含めた女性のライフコースを描いた.同パネル調査の個人追跡データを分析した結果によれば,コーホートごとに主たる学歴の女性は,その3割以上が首都圏に移動しており,広域市への移動は1980年代には増加するが1990年以降からは減少している.これは産業の地域構造が時代と共に変化してきたためであり,韓国の産業の地域構造は,国の特定産業の育成政策と密接に関係する.さらに同一コーホート内で移動者と残留者を比較し,初就業時の居住地移動が彼女たちのライフコースに及ぼした影響を分析した.その結果,1933-57年コーホートの首都圏移動者が,結婚前に女性就業を始めた集団であり,1960-70年代に首都圏に集中した軽工業の労働力となったことが分かった.また結婚以前に就業し結婚を契機に退職するという就業パターンは,1958-67年コーホートから定着し,1980年代に全国的に広まったことが明らかになった.最も若い1968-77年コーホートは1990年代末からの経済不況のなか,成長産業であるIT産業の準専門的な仕事よりは,既存のサービス産業に多く吸収されている.
- 経済地理学会の論文
- 2008-03-30