「元気な」東海地方に見る不均等な経済回復(<特集>経済の回復過程における地域の再生と不均等)
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概要
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いわゆるバブル経済の崩壊以降,日本経済は「失われた10年」とも呼ばれる長期にわたる低迷期を迎えた.そのような中で東海地方は,2005年の愛知万博「愛・地球博」開催や中部国際空港の開港,自動車産業や液晶産業などの好調を背景に「元気な」地域として言及されることも多い.しかし,東海地方内部でも経済回復の状況は一様ではない.1994年から2004年までの変化を見ると,製造業では自動車産業地域や,電気機械関係の工場が新規に立地した地域では出荷額の増加が見られるものの,繊維・衣服・窯業など,この地方の地場産業地域では大幅に減少した地域も多い.大都市圏の中心都市である名古屋市でも大規模工場の閉鎖が続き大幅に減少した.小売業では,1990年代後半までは商品販売額が増加した市町村も多かったが,近年では減少している市町村も多い.人口増加が続いている一部の市町や大規模な大型店が新規立地した市町が限定的に大幅な増加を示している.景気拡張期にあっても成長率は低く,少子高齢化の進展も合わせて考えると一様な経済回復は考えにくい.バブル経済崩壊後の低迷からの経済回復は,東海地方というひとつの地域の中においても,1980年代までとは異なり地域差をともなってのものだと言えるだろう.
- 2007-12-30