私鉄系デベロッパーによる不動産事業の展開 : 阪急電鉄グループの事例
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概要
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本稿は私鉄系デベロッパーによる不動産事業の展開や戦略性を明らかにすることを目的とし,特にバブル経済崩壊以降の動向を考察した.本稿では,デベロッパーとしては先駆的存在であり,幅広く不動産事業を展開してきた阪急電鉄グループを研究対象とした.同グループにおいて,デベロッパーとしての役割を担ってきたのは阪急電鉄および阪急不動産であることから,両社の活動を中心に考察した.考察の結果,以下の諸点が明らかとなった.(1)同グループの不動産事業は,賃貸事業が安定した利益を生み出してきた点に特徴がある.賃貸事業の基盤は,同グループが梅田地区再開発を実施したことで,1960年代から1970年代にかけて形成された.(2)バブル経済崩壊後,同グループの分譲事業はマンション分譲に特化した.そのような動向は他の大手デベロッパーの動向と合致する.(3)両社の不動産事業の展開には空間的・時間的差異が見られた.そのような差異は両社の本業の違いによるものである.グループ全体の不動産事業として考えるならば,両社の差異は結果的に開発を分担したものとして位置づけられる.住宅地開発を推進する役割の点において,私鉄企業がデベロッパーを兼ねる意義は小さくなった.しかし,沿線住民が利用する施設の整備や駅前再開発などを通じて,沿線住民の生活の利便性を重視したサービスを提供する点に,今日でも私鉄企業が不動産事業を展開する意義があるといえる.
- 2006-09-30
著者
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