国内産業集積の縮小と東京圏の困難と可能性 : 経済環境と集積構造の変化による比較分析(<特集>産業集積地域の革新性をめぐって)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,東京圏の産業集積の革新性について,小規模企業の集積にシフトしている都心部と,大規模から小規模に至る多様な企業が集積している外周部の二つの地域に区分し,両者の比較分析を試みた.この場合,産業集積の革新性に大きな影響を及ぼしたと考えられる経済環境の変化と事業所数の増減の分岐点を基軸に,三つの時代区分を設定した.一つは,拡大経済下において産業集積が拡大した時代,二つは,拡大経済下において産業集積が縮小に入った時代,三つは,バブル経済崩壊以後の長期にわたる景気低迷,すなわち縮小経済下における産業集積の縮小時代である.こうした分析によって,次の点が明らかになった.一つは,小規模化が著しい都心部が,「多様性からの後退と革新性の縮小」に直面していることである.こうした革新性の縮小は,拡大経済下では豊富なビジネスチャンスによって覆い隠されたが,縮小経済下では小規模化による同質化という新たな問題を顕在化させている.二つは,小規模から大規模層を含め幅広い集積を特徴としている外周部が,多様な取引場面を備えると共に,多様な革新性を備えていることである.
- 2005-12-30