タンパク質の0次構造と生命の起原(<特集>シンポジウム「生命起原研究を巡って」)
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概要
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RNAが遺伝的機能と触媒機能を同時に持ち得ることを主な根拠として,RNAワールド仮説が1986年にW.Gilbertによって提案された.彼は,生命はRNAの自己複製によって形成されたRNAワールドから生まれたと考えたのだ.そしてこの考えが,現時点では生命の起原を説明するための主な考えとなっている.しかし,この仮説はヌクレオチドやRNAを無生物的に生成することが困難であるなど多くの問題を抱えている.それに対して,私たちは生命はGly[G],Ala[A],Asp[D]そして,Val[V]の4種のアミノ酸からなるタンパク質で構成された[GADV]-タンパク質ワールドから生まれたとの[GADV]-タンパク質ワールド仮説,略して,GADV仮説を提案している.一般に,既存の考えとは大きく異なる考えを新たに生み出すためには,新しい概念の導入が必要である.私たちの主張する生命の起原の提案にとっては,タンパク質のデータ解析から得られたタンパク質の0次構造,即ち,高い確率で水溶性で球状のタンパク質をランダム重合によって合成できる特異なアミノ酸組成という新しい概念の導入が重要なポイントとなった.即ち,遺伝的機能の存在しない条件下,言い換えれば,最初の遺伝子が形成される以前であっても,水溶性で球状の[GADV]-タンパク質を[GADV]-アミノ酸のランダム重合によって高い確率で生成できるという一つのタンパク質の0次構造に気づいたことが生命の起原に関する新たな概念を生み出したのである.本論文ではタンパク質の0次構造を中心に記載する一方で,私達の主張するGADV仮説の可能性も議論したい.
- 2010-03-01
著者
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