日本に南方から飛来する蝶類
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概要
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日本列島に南方(南九州以南をふくむ)から飛来すると思われる蝶類26種の採集記録の総括と再検討およびそれらと天気図,台風進路図との対比を行なった.1.採集記録の分布図から,到着地が九州南西部に著しくかたよっていることがわかるが,これは南西の気流による飛来が多いことを示している.2.到着後14〜15種類は一時的に発生したと思われるが,越冬した例はごく少なく,それによって翌年子孫があらわれた例は未知である.3.飛来は次のような気象条件の時におこる.(a)北太平洋高気圧がやや南偏して日本の南方洋上に張りだし,日本がその北縁におおわれてオホーツク海高気圧との間に前線を形成,その前線上を温帯低気圧が東進する場合.強い南または南西の気流が生ずる.(b)北太平洋高気圧の西縁を熱低または台風が北上する時.その右側に強い南よりの風が吹きこむ.(c)台風が日本列島に上陸する場合.その目に入って運ばれる.4.飛来の時期は5〜7月,特に7月のつゆ明け時が最も多く(主に上のaによる),その後はそれらの子孫の二次的な分散および台風(b,c)による搬入がみられる.5.出発地はフィリピンを中心に,東はパラオ群島,西はアジア大陸東縁,北は台湾,琉球にのびる扇形の地域が主であろう.6.出発は自発的に群飛する習性をもつ種以外は,上昇気流あるいは台風にまきこまれる場合が考えられる.7.記録の年変化には1957〜1958年からやや注目すべき変化がみられるが,戦争による空白時代などのため,まだ問題点は明確でない.
- 1971-08-31
著者
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