BUTTERFLIES COLLECTED BY THE LEPIDOPTEROLOGICAL RESEARCH EXPEDITION TO NEPAL HIMALAYA, 1963. PART I PAPILIONOIDEA
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は,ヒマラヤ蝶蛾調査隊が採集して持ち帰つた蝶類のリストで,セセリチヨウ科を除き,286種を扱つている。ヒマラヤ地方の蝶は,主としてイギリス人の手によつて前世紀後半より詳しく調べられて来ているが,ネパールは鎖国をしていたため採集家が足をふみ入れる機会がほとんどなかつた。そのため,ネパールの蝶に関する大きな報文としては,わずかにBaileyのリストがあるのみである。戦後ネパールは世界各国に門戸を開き,数多くの登山隊が入り,蝶に関する報文もチラホラ現われて来たが,隣国のシツキムやカシミール地方に比べれば未だ全たく未開拓と言つても良いほどであろう。それは,本稿の中に,ネパール新記録種が36種も含まれていることによつてもうかがい知れよう。また,本稿の中で新種として記載したのは,次の4種である。Parantica pedonga Fujioka(マダラチヨウ科)(Pl.3,no.1,Fig.1)Rapala hinomaru Fujioka(シジミチヨウ科)(Pl.11,no.5 and 6)Neptis tamur Fujioka(タテハチヨウ科)(Pl.15,no.5 and 6,Pl.16,no.5 and 6,Fig.11)Aulocera asahi Fujioka(ジヤノメチヨウ科)(Pl.29,no.5 and 6)また,新亜種として記載したものは,次の5種である。Chrysozephyrns kirbariensis shakunage Fujioka(Pl.7,no.1 and 2,Pl.8,no.1 and 2,Fig.7)Chaetoprocta odata kurumi Fujioka(シジミチヨウ科)(Pl.9,no.1-4)Phaedyma aspasia kathmandia Fujioka(タテハチヨウ科)(Pl.21,no.3 and 4,Pl.22,no,3 and 4,Fig.13)Lethe latialis hige Fujioka(ジヤノメチヨウ科)(Pl.25,no.3 and 4.Pl.26,no.3 and 4).Neope pulahoides tamur Fujioka(ジヤノメチヨウ科)(Pl.27,no.3,4 and 6.Pl.28,no.3,4 and 6,Fig.14)その他,♀の新発見としては,Chrysozephyrus bhutanensis Howarth(Pl.7,no.4.Pl.8,no.4)更に,種に関して従来と異なつた知見と考えられるものは次の通りである。1.Freyeria putli(kollar)は,Freyeria trochilus(Freyer)の亜種とされていたが,独立種として扱うべきである。また,台湾など東南アジアに広く分布するタイワンヒメシジミの種名としては,trochilusでなくてputliを用いるべきである。2.Polyura agrarius(Swinhoe)は,Polyura athamas(Drury)のシノニムとされていたが,明瞭な別種である。3.Neope pulahoides Mooreは,Neope pulaha Moore(アリサンキマダラヒカゲ)のアツサム産亜種とされて来たが,brandを欠くことなどによつて明瞭に区別される別種である。そしてpulahoidesは,アツサムのみならず,ネパール,中国にも産する。4.Catopsilia florellaは,Catopsilia pyranthe(ウラナミシロチヨウ)の冬型あるいは乾期型と考えられていたが(少なくとも日本では),夏の雨期にもpyrantheに混じて多数採集された。但し別種であるか同種の遺伝型であるかは,今後の課題であるが,本稿では別種として扱つてある。ヒマラヤの蝶相は,ネパールを東西に狭むシッキムとカシミール〜クマオンでは著るしく異なつて居り,ネパールの蝶相をこの両地方と詳細に比較することは分布地理学上極めて興味深い。また,ヒマラヤの種と台湾,日本の近似種との類縁関係を詳細に検討することも,極めて重要である。これらについては現在研究中で,いくつかの結果も得られているが,本稿ではあまりふれずに,種のリストと新らしい種,亜種の記載だけに止めた。
- 日本鱗翅学会の論文
- 1970-11-25
著者
関連論文
- BUTTERFLIES COLLECTED BY THE LEPIDOPTEROLOGICAL RESEARCH EXPEDITION TO NEPAL HIMALAYA, 1963. PART I PAPILIONOIDEA
- Measurement Error in Saturation Parameter and Small Signal Gain Due to Beam Distortion