狭山丘陵における人工巣を用いた被捕食実験
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概要
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都市近郊に残存する樹林地において,ダミーの卵を入れた人工巣を設置して卵が捕食される状況を調査し,樹林地における捕食圧の空間的なパターンを明らかにすることを試みた.調査は,東京都と埼玉県の境に位置する狭山丘陵の比較的大規模な樹林地とその周辺の孤立樹林地5ヵ所の計6ヵ所で行った.樹林地では,周囲から侵入してくる捕食者によって,林縁付近においては被捕食率が高くなることが予測されたが,林縁からの距離と被捕食率の間には統計的に有意な相関は認められなかった.また,面積の小さな樹林地では被捕食率が高いことが予測されたが,比較的大規模な樹林地でもっとも被捕食率が高く,その他の孤立樹林地と有意な差を示した.最も面積の小さい樹林地で捕食率は最低であった.生息密度の高さからハシブトガラスが主な巣の捕食者であると考えられるが,ハシブトガラスの密度は狭山丘陵の樹林地で最も高く,またハシブトガラスは樹林地周辺に限らず樹林地内部でも多数観察された.このことから,鳥類の巣における捕食は,主な捕食者の樹林地内外の分布状況によって大きな影響を受けていることが示唆される.
- 日本生態学会の論文
- 1996-08-31
著者
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