プライマリー・グローバリゼーション : もうひとつのグローバリゼーションに関する人類学的試論(<特集>「グローバリゼーション」を越えて)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
グローバリゼーションについて論じることには現在、特有の困難がある。その一因はグローバリゼーションをめぐる議論や論争、対立等が必ずしも自明ではない暗黙の前提をもとに議論されていることにある。本稿は、その暗黙の前提を指摘し、従来のグローバリゼーションをめぐる議論の多くは、本稿で「大文字のグローバリゼーション」と呼ぶ概念に依拠しており、それはグローバリゼーションをめぐる議論の可能性のありうる可能性のうちの一部にすぎないことを指摘する。ここで言う「大文字のグローバリゼーション」とは、主として時間軸上では近代以降の、そして空間軸においては欧米などを中心とした「中心-周辺」モデルを暗黙の前提とした概念である。この従来のグローバリゼーション概念に代わる枠組みとして本稿では「プライマリー・グローバリゼーション」という概念を新たに提唱する。この「プライマリー・グローバリゼーション」とは、近年の歴史研究等で指摘される前近代の非西欧地域において既に存在していた広域に跨る人、モノ、文化等の移動やネットワーク、フロー状況を、現代的文脈においても持続している現象として再定義したものである。本稿はこうしてグローバリゼーションのありうる複数性や多元性に注意を喚起すると同時に、またそうした複数の異なるグローバリゼーションが、相互にどのような関係を切り結んでいるのかを、筆者のフィールドであるミンダナオのムスリム分離主義運動を含むイスラームの動向などを題材に検証することを通じて、グローバリゼーションに関する人類学的議論の可能性を拡大することを試みるものである。
- 2010-06-30
著者
関連論文
- プライマリー・グローバリゼーション : もうひとつのグローバリゼーションに関する人類学的試論(「グローバリゼーション」を越えて)
- アガマ(宗教)をめぐる「日常の政治学」-フィリピン ナンブ スールー諸島におけるイスラームとシャーマニズム
- 民族のこころ(142) : フィリピン国政選挙見学ノート
- 東南アジアにおける人の移動と文化の創造
- 青山和佳著, 『貧困の民族誌-フィリピン・ダバオ市のサマの生活』, 東京, 東京大学出版会, 2006年, 414頁+xi, 7,560円
- 「海賊鎮圧」から「対テロ戦争」へ--欧米の東南アジア関与における「長い持続」 (特集 アメリカの戦争)
- 《未開発言語・文化習得のための現地派遣》報告(36) : 「対テロ戦争」下の東南アジアとヨーロッパで考える
- 民族のこころ(133) : サイバースペースのなかの「ピープルパワー」
- 民族のこころ(123) : サリサリストアー経営の秘訣?
- フィリピン南部ムスリム社会における宗教実践の変容
- 「ここではないどこか」から (新入所員自己紹介)