「明日の私」を葬る : エチオピアの葬儀講仲間がつくりだす応答的な関係性
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概要
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葬儀講は、20世紀以降のエチオピアにおいて都市を中心に広く普及している住民組織の形態であり、その基本的な機能は、葬儀をおこなうために必要な費用と労働力とを仲間どうしで提供し合うことにある。本稿では、葬儀講の活動をパーソンフッドの概念に関する議論と重ね合わせながら検討する。葬儀講の活動は、仲間の「評価と選別」に関わる局面と、「死者への配慮」に関わる局面からなり、後者の局面は、他者からの要請に応じて構築されるという意味で、応答的な関係性をつくりだす営みであると考えることができる。このような関係性がつくられる前提にあるのは、共有された何らかの基準によってパーソンフッドが把握されるのではなく、人びとを結びつける関係性そのものに価値が付与されるという理解である。本稿の目的は、第一にはアジスアベバの一地区における葬儀講活動の検討をとおして、その活動に関わる人びとが、上述のような応答的な関係性をつくりだしてきた過程を明らかにすることである。加えて本稿では、葬儀講活動のいかなる性質が、応答的な関係性の構築を可能にしているかも考察する。葬儀講の仲間が応答的な関係性をつくりだせるのは、葬儀講の活動が、将来における不確実な問題に共同で対処することを目的とした相互扶助の営みであることと密接に関係している。そこでは、厳密な互酬性のもとで既存の関係性を長期的に維持することよりも、他の者が必要なときに「持ち去る」のを許容し、そのための準備を整えておくことが重要な規範となるのである。
- 2010-06-30
著者
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