Bacotia属に類似した台湾産のミノガ科の1新属とその系統的位置について(鱗翅目)
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概要
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台湾中部の台中県梨山環山の落葉広葉樹林で採集した小形のミノガの蛹化ミノから得られた1頭の雄に基づいて新属新種Tayalopsyche spinidomiferaを記載した.本種は前翅がやや尖った小形黒褐色のミノガで,一見するとBacotia属に外観が類似しているが,中脈分岐によってcellulaa intrusaが中室内に形成され,雄交尾器のuncusが大形で,tegumenとの間に判然とした境界が認められ,diaphragmaが深くポケット状に陥入するなどの形質によって顕著に異なっている.本属は雄交尾器の背域の基本構造とvalvaの概形などから,Dissoctenioides(アトラス山脈),Pseudofumea(アトラス山脈),Luffia(欧州),Bacotia(欧州,ネパール,日本)などの諸属と近縁であると考えられる.本属と同様に両櫛歯状の雄の触角を持ったPsyche及びProutia属からは,良く発達した雄交尾器のuncusや,前翅中室先端前部にR_<4+5>,脈によって付属室が形成されるなどの諸点で異なる.これらの属が1系統群を形成しているとすれば,本新属はその系統発生の初期段階で分岐した原始的なメンバーである可能性が高い.本種のミノは,Proutia属などのミノに概形が似ているが,細長い植物の破片をミノの外壁に直立するように付着する点が特異で,一見するとミノから棘が生えているような外観をしている.このような被覆物の付着の仕方も,この群としては他に例が見られない.ミノの付着物や蛹化場所(ススキに似た植物の葉裏)などから判断すると,本種の幼虫は森林の地上で枯れたり分解中の高等植物の葉や茎を摂食していると考えられる.本新属の発見は,今後東アジア,特に中国大陸の温帯から亜熱帯にかけて,本群の未知の属が発見される可能性を示唆している.
- 2002-09-30
著者
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杉本 美華
Biosystematics Laboratory, Graduate School of Social and Cultural Studies, Kyushu University
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杉本 美華
Biosystematics Laboratory Graduate School Of Social And Cultural Studies Kyushu University
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